馬刺しと言ったら熊本が有名ですが、実は明確に「熊本産」といえる馬刺しは日本でほとんど流通していません。
例えば「熊本馬刺し」と表示される商品であっても熊本産じゃなかったり…。
お店が嘘をついているわけではないんですが、馬刺しは産地を表記する際の基準がちょっと特殊なんですよね。
めちゃくちゃややこしいんですが、馬刺し好きの方にはぜひ知っておいてもらいたい知識です。
また、今回は楽天さんから純熊本産馬刺しをいただいたので、僕がこれまで食べてきた普通の馬刺しと比較していきたいと思います。
実際に本物の純熊本産馬刺しと食べ比べてみると、その大きな違いに驚きました。
日本で流通している馬刺しはほとんど「カナダ」で生まれた馬
日本で流通している馬刺しの多くはカナダで生まれた馬です。
多くの人が、日本で交配させて育てた馬だと思って食べてるんじゃないでしょうか。
普通「熊本馬刺し」とか「熊本産」なんて聞いたら、熊本で生まれて熊本で育った馬だと思いますよね(笑)
馬刺しに関してはそんなに単純な話ではないんです…。
実は以前、お取り寄せの熊本馬刺しを紹介したんですが、それもカナダ生まれの馬を熊本で育てた商品でした。
純熊本産馬刺しは1%しか流通していない
ちなみに、熊本生まれ熊本育ちの馬刺しは「純熊本産馬刺し」や「熊本産馬刺し」なんて表記されたりするんですが、この純熊本産馬刺しは日本でたった1%しか流通していません。
本場の熊本ですらめったに食べられるものじゃないらしいですよ。
当然、熊本意外でも自家交配はされています。
それでも、日本で出回っている馬刺しの9割以上が、1歳くらいでカナダやフランスなどの海外から輸入された馬というのが現状です。
馬刺しの産地を決める基準について
ここからは、より詳しく馬刺しの産地を決める基準を見ていきたいと思います。
海外輸入の馬でも、ある条件が整えば国産と表記して販売できるんです。
といっても、ネット上ではいろんな情報が乱立していて、結構ややこしいことになっています。
時間を経て法律が改正されてきたので、リアルタイムの正確な情報を得たい場合は、農林水産省のJAS法に目を通すことをおすすめします。
最も肥育期間の長い場所が産地となる
農林水産省で定められたJAS法によると、馬刺しのような畜産物については(水産物も同様)、最も飼育期間の長い場所を原産地として表記できるそうです。
つまり海外で生まれた輸入馬でも、日本での飼育期間の方が長ければ国産と表記できるわけです。
複数の産地を移動しながら肥育された場合も同様。一番長く飼育されてた国が原産地となります。
3カ月ルールの撤廃について
ちなみに以前は、畜産物だけ特別に3カ月以上の肥育で国産と表記できてたそうです。(通称3カ月ルール)
厳密に言うと、牛は3カ月、豚は2カ月、それ以外の家畜は1か月とのこと。
しかし、そのルールの曖昧性から、合理性の乏しさや誤認される恐れを指摘され、3カ月ルールは撤廃されるに至りました。
食品管理に厳しいご時世ですから、今後も基準はどんどん厳しくなる傾向にあるでしょうね。
「熊本馬刺し」と「熊本産馬刺し」の違い
さらに言うと、「熊本馬刺し」と「熊本産馬刺し」にも違いがあります。
- 熊本馬刺し・・・熊本で4カ月以上飼育された馬
- 熊本産馬刺し・・・熊本生まれ熊本育ちの馬
ちなみにこの基準は、いくつかの生産業者が集まって作った自主ルールだそうです。
上記で紹介した通り、法律的な産地は一番長くいた場所なんですが、熊本で4カ月以上飼育された馬なら「熊本馬刺し」という商品名で販売できるんです。
といっても、これは自主ルールなのでけっこう曖昧らしく…。
海外や別の県から熊本に来た馬も、熊本にいる期間が最も長ければ熊本産馬刺しとして販売するケースもあります。
通販の馬刺し専門店をいくつか覗いてみましたが、その見解が微妙に違うんですよね…。
だからこそ、今回いただいた”純”熊本産馬刺しのように分かりやすく明記するお店があるのかもしれません。
産地の表記を良くみることが大切
この通り馬刺しの産地表記には、法律の改正や独自の基準などがあるため、非常に曖昧な部分があります。
産地にこだわる方は産地の表記を良く確認することが重要です。
しっかりしたお店であれば、馬がたどってきた産地を分かりやすく明記してくれています。
自信をもって馬を育てているお店であればあるほど、そういったところはしっかりしているイメージがありますね。
- どこで生まれた馬なのか?
- どの地域で長く飼育された馬なのか?
産地を気にする方は、この2点に注目してみると良いですよ。
逆にこういった情報が掲載されていないのに熊本産を謳ってる商品は不安になりますね…。
熊本馬刺しと純熊本産馬刺しを食べ比べ
産地の違いがなんとなく分かったことで、ここからは「熊本馬刺し」と「純熊本産馬刺し」の食べ比べをしていきたいと思います。
僕はこれまでいろんなお店で馬刺しをお取り寄せしてきましたが、どれもカナダから輸入して熊本で育てられた熊本馬刺しでした。
熊本で4カ月以上飼育された、国産の熊本馬刺しです。
今回は正真正銘、熊本生まれ熊本育ちの熊本産馬刺しを頂いたので、その違いをお伝えできればと思います。
カナダから輸入して熊本で育てた「熊本馬刺し」
こちらが普段僕が冷凍庫にストックしている熊本馬刺し。
ストック用は「上赤身」のみを購入してます。
「ふたえご」や「たてがみ」との食べ比べは下記の記事で紹介してるので、詳細はこちらの記事でご確認いただければと思います。
もちろん法律的にもれっきとした国産馬刺しなんですが、海外から輸入してきた馬と聞くと、少なからず不安に思う方もいるでしょう…。
とはいえ、正直これも十分美味しいんですよね(笑)
値段も安いですし満足感もあります。
馬特有の風味はありますが、馬の匂いって正直オーストラリア牛と違って全く気になりませんからね。
むしろそこが美味いと感じる方もいるんじゃないでしょうか。
熊本生まれ熊本育ちの「純熊本産馬刺し」
そんな熊本馬刺しをよく食べてる僕が、熊本生まれ熊本育ちの正真正銘「熊本産」の馬刺しを食べたらどうなるのか…。
結論、全く別の肉を食べてるような感覚でした。
率直に感じた熊本馬刺しとの大きな違いは2つ。
- 色がきれいな赤色
- 臭みが全くない
まず見た目の鮮やかさが違いましたね。
馬刺しマニアは、見た目と味で産地が分かるそうなんですが、これも1つの見極めポイントになっているんでしょう。
味の比較でいうと、全く臭みがないことに驚きました。
もともと熊本馬刺しが馬臭いと思って食べてなかったんですが、本物の熊本産馬刺しと食べ比べると一目瞭然の違いです。
分かりやすく例えるなら「牛刺し」のような味わいでした。上品さが数倍増してます。
それでいて脂身は馬刺しらしくあっさりして非常に食べやすかったですね。
ちなみに今回いただいた純熊本産馬刺しは、豆乳を餌にすることで臭みのない馬刺しに育て上げてるそうですよ。
最近は牛の生食が厳しくなってますが、この純熊本産馬刺しであれば何ら遜色ない味が楽しめます。
これが流通1%の味なんですね…。普通の馬刺しと一緒に並べるのは憚れるレベル。
この味を知らずして馬刺しは語れません。
輸入して育てた国産馬刺しや熊本馬刺しが不味いわけではない
馬刺し好きにはぜひ一度食べてもらいたい味でした。
全国流通1%なので値段は高めですがその価値は十分にあると思います。
といっても、もちろん「海生まれの馬=不味い」というわけではありません。
実際、9割以上は海外輸入の馬刺しなわけですし、品質も全然悪くありませんからね。